• NEWS
  • 【GOOD NEWS NEIGHBORS -北海道・道南編-#3】Paard Musée「BEURRE キャラスク」(七飯町)
NEWS一覧

SHARE

【GOOD NEWS NEIGHBORS -北海道・道南編-#3】Paard Musée「BEURRE キャラスク」(七飯町)

GOOD NEWSが各地を旅するなかで出会ったお店や商品を紹介する『GOOD NEWS NEIGHBORS』ポップアップを、新千歳空港にて展開中。

今回訪れたのは北海道の南部に位置する道南エリアです。
この地域で「道南のプレイヤーが繋がり、成長するきっかけ作り」を目的に活動している『道南サミット』のメンバーに案内してもらいながら、お菓子作りをする生産者の方々を訪ねました。
2月末、まだ雪が残る大地に少しずつ春の気配が漂い始めた北海道の旅。
同行した道南在住のライター・阿部光平が、その模様をお届けします。

道南第二弾はこちらから。

馬との暮らしを営む パド・ミュゼの風景

 道南は、日本初の国際貿易港として開かれた函館市を含む18の市町からなるエリアだ。三方を海に囲まれ古くから漁業で栄えてきたほか、農業や畜産も盛んに行われており、新鮮で多種多様な食材が手に入る。このエリアでお菓子を作っている方々を訪ね、新千歳空港にある店舗で一緒に商品を展開させてもらうことが、今回の旅の目的だ。

 GOOD NEWSの代表を務める宮本吾一さんと函館で合流し、最初に向かったのは七飯町。明治期に西洋式農業の試験農園が開かれ、食糧生産地としての開拓拠点になった町だ。そうした歴史を踏まえ、「人が自然と動物と協働する新しい未来」をテーマに馬との暮らしを営んでいる牧場がある。ゴルフ場開発の跡地を開拓して作られた『Paard Musée(以下:パド・ミュゼ)』という牧場だ。

函館からパド・ミュゼまでは車で40分ほどの距離。車窓の風景は歴史ある港町からロードサイドへと変わり、やがて自然豊かな大沼国定公園が見えてくる。辿り着いた牧場では、北海道の在来馬として知られる『どさんこ』がのんびりと草をはんでいた。

パド・ミュゼを運営する大藤将太さんがまず案内してくれたのは、大きな厩舎。そこでは子どもたちが馬の給餌や掃除をしていた。この牧場には子ども園が併設されていて、園児たちが馬やヤギの世話をしながら過ごしているという。人間中心ではなく、馬に合わせた生活。命に寄り添い、自然と共生する暮らしが営まれているのだ。子どもたちがリラックスして馬と接している姿が印象的だった。

▲毎日、朝と昼に園児たちが馬の餌やりや厩舎の掃除を手伝っている。自然との共生保育が評価され、2022年にグッドデザイン賞も獲得した。

 敷地内にある森では、メープルシロップの原料となるカエデの樹液が採取されていた。ちょうど冬から春にかけての今頃が、地表が溶けて樹液が上がってくる時期なのだそうだ。1本のカエデの木から採れる樹液は、多いときで1日に1リットル。それを煮詰めてメープルシロップにすると、残る量は70分の1ほどになる。約400本の木から毎日採取しても、年間で小瓶に400本ほどしか作れない貴重な自家製メープルシロップだ

▲カエデの木に付けられた樹液採取のためのバケツ。時間帯と気温によっては、樹液がポタポタと落ちる様子が見られることもある。

 製造過程を説明しながら大藤さんが見せてくれたのは、カナダで販売されているメープルシロップの缶。そこには、馬が雪景色のなかで荷を引く絵が描かれていた。「採取した樹液の樽を、馬がシュガーハウス(加工場)まで運んで行くというのが、クラシカルなメープル作りなんです。日本では在来馬がどんどん少なくなっているんですけど、淘汰されてきた理由って馬が生活で使われなくなってきたからなんですよね。逆に馬を使うシーンを増やせば、生態が維持されていきます。そう考えると、できる限り馬の仕事作りをしたいと思っているんですよね。だから、生産量は少なくても、人と馬が密接に関わってきたメープル作りは大切にしています。パド・ミュゼは、人と馬が一緒に暮らしていく牧場なので」。

 パドはオランダ語で「在来馬」を、ミュゼはフランス語で「博物館」を意味している。ここを訪れた人たちが目の当たりにするのは、過去の歴史展示ではなく、現在も続いている人と馬の暮らしなのだ。

▲馬が樹液樽を運ぶ可愛らしい絵が描かれたメープルシロップの容器

キャラスクの誕生とナラティブを活かした進化

 パド・ミュゼには『BEURRE』というお菓子のブランドがあり、『キャラスク』という商品が生産されている。北海道産の小麦、バター、てんさい糖を使用し、1枚1枚香ばしく焼き上げた生地をキャラメルでコーティングした、シンプルでリッチな味わいのお菓子だ。このお菓子の成り立ちについて、大藤さんは次のように説明してくれた。

▲BEURREはフランス語で「バター」の意味。店舗として使われていた建物がロゴになっている

「パド・ミュゼを立ち上げるときに、フランスへ視察に行ったんです。そのときに出会ったお菓子屋さんのゴーフルがすごく美味しくて。牧場のお土産物として、ゴーフルに地域の食材を挟んで、土地の魅力を伝えられるようなお菓子を作ることにしたんです。だから、最初は生地の間に自家製のバタークリームやメープルを挟んだ生菓子を売っていました」

 BEURREのお菓子はすぐに話題となったが、しばらくすると工場・店舗として借りていた建物が使えなくなり、生菓子の製造販売が困難になってしまった。そこから試行錯誤を重ね、常温で持ち歩ける焼き菓子として生まれ変わったのがキャラスクというわけだ。「誰と作るとか、お金が回るべきところに回ることを大事にしたい」との考えから、キャラスクの生産は就労支援施設で行われている。最初から半割れの状態で商品になっているのは、作業をしやすくして、割れによるロスを減らすための施策だったのだ。こうした取り組みに、農業・福祉・観光の掛け合わせによって新たな価値創造を目指すGOOD NEWSとの共通点が感じられる。

▲パド・ミュゼを運営する大藤将太さんと、GOOD NEWSの代表を務める宮本吾一さんの真剣な話し合い

大藤さんの想いに共感した宮本さんは「キャラスクにもメープルシロップを使ってみたらどうですか?」と提案。「偉そうに言うわけじゃないんですけど」と前置きした上で、「これだけナラティブがある牧場なのに、お菓子と繋がっていないのはもったいないですよ。馬との暮らしの先にメープル作りがあって、それがお菓子になっていたら、食べてみたくなるじゃないですか。僕、お菓子はメディアだと思っていて。商品を通して、パド・ミュゼの考えや取り組みを伝えることができると思うんですよね」と話した。

 聞く側も話す側も本気でお菓子のことを考えているからこそ、その言葉は真っ直ぐに届いたのだと思う。話を聞きながら、大藤さんの表情が明るくなっていくのがわかった。「ちゃんと意味を持ったお菓子にしたい気持ちは、ずっとあったんですよね。だけど、メープルは生産量が少ないこともあって、なかなか踏み切れなくて。でも、今のお話を聞いていて、次に向かうためのお題をもらったような気持ちです。せっかくの機会だし、メープルを入れて作ってみます」。

▲実は前日の夜、函館の集いで偶然にも先に会った大藤さん。

きっと生産者の方々にとっても、新千歳空港で商品を売るというのは大きなチャレンジになるのだろう。それ故に、新しい一歩を踏み出すのは簡単な決断ではない。しかし、そのチャレンジは確実に未来を切り拓いていくはずだ。そういうきっかけを作ることが、今回の旅が持つひとつの意味なのかもしれない。そんなことを感じる場面だった。

▼道南サミット的おすすめポイント

函館から車で40分。七飯町・大沼エリアにあるパド・ミュゼは、その場の壮大さや魅力を

言葉だけでは言い表せないからこそ、大事な人をわざわざ連れて行きたくなる道南の隠れスポットです。大沼の自然や風土、馬と暮らす人々を思いながら、カエデの樹液で作られたメープルシロップの優しい甘さが特徴のキャラスクを楽しんでいただきたいです。

■展開スケジュール 
6/25(火)~7/29(月) 

■展開商品 
BEURRE キャラスク 8枚入り(2枚×4袋)990円(税込)

APPLICATION

みんなが繋がる、広がる、続けるまちづくりアプリ

アプリをダウンロード&会員登録でGOOD NEWSでお買い物すると、サステナブルポイントがお買い物額の1%貯まります。貯まったポイントを、GOOD NEWSの取り組むサステナブルアクションに運用させて頂くことで、皆様の日々のお買い物を「持続可能なまちづくり」に繋げていきたいと考えています。

ダウンロードはこちらから。
ご利用はすべて無料です。

みんなが繋がる、広がる、続けるまちづくりアプリ