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酒粕でお菓子をつくることが、秋田県・男鹿(おが)のまちづくりに関わる方法だった。レモンケーキ『早苗饗レモン(さなぶりれもん)』が生まれた理由

未利用食材を活用したお菓子づくりを通して、地域の食の生産者が持つ課題を解決していくGOOD NEWS。
秋田・男鹿(おが)でクラフトサケ(※1)の酒蔵を営む『稲とアガベ』のみなさんとの出会いをきっかけに、日本酒から出る“酒粕”を利活用したレモンケーキ「早苗饗レモン(さなぶりれもん)」が生まれました。

そんなお菓子づくりの背景を伝えるべく、『稲とアガベ』代表の岡住修兵さんと、GOOD NEWS代表・宮本吾一が対談。2つの会社がどのようにして出会ったのか、そして、「早苗饗レモン」というお菓子にどんな思いが込められているのか。ふたりで語り合った内容を、宮本吾一が振り返ります。

※1:クラフトサケ……日本酒の製造技術をベースに、副原料を入れて醸造した「その他の醸造酒」。清酒免許の新規取得が難しいなかで、地域に新しい酒蔵をつくるためにこのような手法が取られることが多い

僕たちが、酒粕からお菓子をつくる理由

宮本吾一です。今日は『稲とアガベ』の岡住くんと一緒に『早苗饗レモン』の背景を話す機会をつくることができました。

ただ、僕たちのことを知らずに読んでくれている人も多いと思うので、まずは僕たちGOOD NEWSのこれまでを振り返るところから、話をはじめさせてください。

GOOD NEWSはこれまでも、スキムミルクを活用した「バターのいとこ」や、ホエイを活用した「ブラウンチーズブラザー」など、地域の未利用食材を使ったお菓子づくりを行ってきました。

『バターのいとこ』
『BROWN CHEESE BROTHER』

そんなGOOD NEWSが新しくつくったのが、日本酒を製造する過程で出る“酒粕”を使ったお菓子『早苗饗レモン』です。すでにいくつかのブランドをやっているなかで、新しいお菓子づくりに踏み出したのは、酒蔵さんが抱える酒粕の問題を知ったことがきっかけでした。

僕たちはいま、栃木県の那須で『酒と肴(さかな)あくび』という居酒屋をやっていて。そこでは、自然栽培でできたお米から造った“しぜん酒”というジャンルの日本酒をメインに取り扱っています。

居酒屋をはじめて、酒蔵さんたちと仲良くなるなかで、僕たちは酒粕のことを知りました。日本酒をつくるのに年間で何千トンと出る酒粕は、栄養価が高くて風味も良い。昔はいろんな料理に使われていたけれど、最近では一般の人が買える機会も、活用される場所も少なくなってしまっていた。お金を支払って業者さんに廃棄してもらうことも多いという現実を知ったんです。

しかも、稲とアガベでは美味しい日本酒をつくるために農薬を使わず育てたお米が使われていて、その酒粕がたくさん廃棄されている。それを捨てずに活用する方法はないかと、ずっと考えていたんです。

旧男鹿駅の駅舎を改装した建物で、醸造所を営む『稲とアガベ』

一緒にお菓子づくりをしている『稲とアガベ』と出会ったきっかけは、秋田でまちづくりに取り組む東海林(しょうじ)さんという方に紹介してもらったことでした。そこで岡住くんと出会って、彼が考えていることや取り組みに共感したから、一緒にお菓子をつくりたいと思ったんです。

岡住くんと話していて感じたのは、「酒造りってまちづくりなんだな」ということでした。例えば、創業300年の酒蔵がまちにあったとき、その酒蔵は300年間雇用をつくり続けていることになる。さらに、地域のお米を酒蔵が買い続けていること、まちの人たちとの関係性が繋がっていること……そうした一つ一つのことが、まちの個性をつくることに繋がっていると思う。

だから、秋田と男鹿のことが好きで、まちを良くしたいと思っている岡住くんがその地域の自然資本を使って酒造りの事業をしていることにもすごくしっくりきました。確かに、酒造りを通して男鹿のまちの未来を良くすることもできるよなあって。

代表の岡住さん。自ら酒造りの作業をします

それから、岡住くんに共感した僕が彼の活動に関わったり、男鹿というまちのまちづくりに関わったりするにはどうしたらいいんだろう?と思った時に、最適だと思えたのがお菓子作りを通した関わり方でした。

酒粕をレモンケーキにしても、年間に何トンもの酒粕を使える訳ではありません。ただ、酒造りのことや地域のことを知るために何度も男鹿に足を運んで、つくったお菓子を全国で販売しながら土地の物語を伝えていくことはできるかもしれない。

お菓子を広めることで、彼の思いに協力ができると思っています。

岡住くんの思う、「秋田のまちへの恩返し」

『稲とアガベ』代表の岡住さん。ほぼ毎日醸造所に行き、醸造メンバーとコミュニケーションをとる

僕たちが『稲とアガベ』の取り組みに共感したことから、今回のお菓子作りははじまりました。

秋田の酒蔵『新政(あらまさ)』に勤めたことをきっかけに、お酒造りの魅力にはまっていった岡住くん。彼の取り組みについて本人に話を聞いていると、彼は「秋田の人たちに生かされてきた感覚がある」と話してくれます。そして、そんな秋田に恩返しがしたいとも言います。

「秋田は少子高齢化率も人口減少率も日本一の県で、人口が減っていく理由の一つには“いい仕事”がこの土地に少ないことがあると思っていて。だから、いい仕事をこの土地に作っていくことが、僕なりの秋田への恩返しになるんじゃないかと思っています」。

男鹿駅前のまちには、岡住くんが立ち上げた醸造所だけでなく、レストラン「土と風」やショップ「SANABURI FACTORY」、宿「ひるね」などたくさんの拠点があります。そして、それらがまちづくりに繋がっているように僕は思う。

なぜお酒造りに止まらず、まちとも関わりに行くのか?岡住くんは僕の疑問に答えてくれました。「簡単にいえば、このままだとまちが無くなってしまうと思ったからです。まちに仕事がないことで人口が減り続けて、まちが無くなれば、自分が作った醸造所も価値のないものになる。まちが無くなった後にそれを眺めているなんて、そんな悲しい人生はないと思ったんです」。

まちがなくならないために、出来ることをやる。商店街で閉まっているシャッターを開けていくことが、まちの活気を生み出すことに繋がると、岡住くんは信じていました。

2023年8月には、ラーメン店の無かった男鹿駅前にラーメン店『おがや』をオープンした

そんな稲とアガベは、どうしてGOOD NEWSと一緒にお菓子をつくることを決断してくれたのか。僕自身も気になっていたし、面と向かって聞く機会もなかったので、聞いてみることにしました。

「GOOD NEWSや『バターのいとこ』の取り組みはずっと興味深く拝見していました。実際に那須の工場や牧場に見学に伺ったこともあります。就労支援の取り組みや、製造工場をつくって雇用を生み出していること、人が集まる場所をつくっていることなど、事業の在り方を見て憧れていた会社でした」。

僕たちが岡住くんの取り組みを見て「一緒に何かやりたい」と思ったように、岡住くんもまた、GOOD NEWSの取り組みを見てくれていたようでした。

実は、GOOD NEWSと一緒にレモンケーキをつくる前から、酒粕の利活用に取り組んでいた稲とアガベ。『SANABURI FACTORY(サナブリファクトリー)』という食品加工場を自社で作ったのも、酒粕をはじめとした未利用食材を活用したいという思いがあったからだといいます。

稲とアガベの食品加工場「SANABURI FACTORY」では、酒粕を使ったマヨネーズ「発酵マヨ」が製造・販売されている

食品加工場の名前に使われている「さなぶり(早苗饗)」も、秋田の人たちにとって大切な言葉。田植えのあと、気を張っていた時期を終えた農家さんたちが集まってお互いを労いながら飲み明かすこと、そしてその飲み会を「早苗饗(さなぶり)」と呼んで大切にしているそうなんです。

土地の文化や歴史に共感しながらものづくりを進めていく彼ら。それぞれの姿勢にお互いに共感しあっているからこそ、いま手を取り合えているのだと思います。

男鹿の土地と酒造りへの想いから生まれた『早苗饗レモン』のこれから

酒粕をつかった商品作りに、“レモンケーキ”を選んだ理由は、お酒が飲めない人にも届いてほしいと考えたからでした。

ぼくらは商品をつくるとき、その商品がメディアになっていくことを考えます。稲とアガベが造っているお酒は、間違いなく男鹿の物語を伝えられるメディアとなる商品です。お酒を購入するお客さんが酒造りの背景にも興味を持ってくれたなら、男鹿のまちで起きていることや、岡住くんの物語が伝わっていく。

でも、お酒が飲めない人にも男鹿のことが届けられるように、次にメディアになる商品として誰もが楽しめる“お菓子”があるといいと思いました。

レモンケーキを選んだ理由は、レモンの酸味と酒粕の風味の相性がすごくいいと感じたからです。レシピ開発を担ってくれている​​PATHのオーナーシェフ・原太一さんが提案してくれたレシピは本当に美味しいし、お酒とも相性がいい。稲とアガベ好きの人にも楽しんでもらえるお菓子ができました。

いまつくっている『早苗饗レモン』には、今年の2月に稲とアガベで製造がはじまった新銘柄『花風(はなかぜ)』の製造中に出た酒粕だけを使っています。彼らのお酒も一緒に楽しんでもらえたら、「捨てるところなく米を楽しむ」ということを実感してもらえるとも思います。

そんな「早苗饗レモン」をつくり、販売していく先に何があるのか、僕が描いている未来と岡住くんが描いている未来は、もしかしたらちょっぴり違うかもしれません。

岡住くんの思い描く未来を聞いてみると、彼は「レモンを使ったお酒を作りたい」と話してくれました。「酒粕がお菓子に変わり、お菓子作りを通して出会ったレモンという食材がお酒になって、そこで出た酒粕は、またお菓子になる……という繋がりが出てくると、お酒とお菓子がセットになって、より広く世の中に伝わるんじゃないかと思います」。

そして、もう1つ大きな夢として彼の口から出てきたのは、早苗饗レモンの製造拠点を男鹿につくること。「それも将来構想の一つなのかなと思います。一つのお菓子をつくることで、新しいお酒が生まれて、地域の雇用も生まれるかもしれない。そんな取り組みに育っていくためには、一人でも多くの人にこのお菓子を知ってもらうことが大事なので、たくさんの人に食べてもらえると嬉しいですね」。

彼らと物語を共有して、製造の仕組みを考えて、『早苗饗レモン』をつくりはじめることができました。ただ、酒粕を使っている、といいながらも、まだまだ沢山の量を使うことはできていなくて。30gのケーキ一つあたり、平均して2gの酒粕しか使えていないんです。

僕らはこれからも頑張ってたくさんのお菓子をつくって、多くの人に手にとってもらいたいと思っています。それと同時に、日本全体でものすごい量の酒粕が出ている事実と、全国各地で酒蔵さんがずっとまちづくりにコミットしてくれているという背景を、僕らはお菓子というメディアを通して伝えていきたい。

日本酒に興味がなかった人にも、お酒が飲めない人にも、この「早苗饗レモン」というお菓子を通して男鹿のまちを伝えることができれば。「今年は◎◎に旅行に行ったけど、来年は男鹿に行ってみたいな」と思ってくれる人が少しでも増えればいいと思っています。

宮本吾一

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