【GOOD NEWS NEIGHBORS -北海道・道央編-#3】CHaT vegan and glutenfree
札幌もまた、ローカル / Sapporo As a Local
新千歳空港にて展開中の「GOOD NEWS NEIGHBORS」ポップアップ。各地を旅するなかで出会ったお店や商品を紹介しています。道央編のキュレーターは、札幌のゲストハウス 「UNTAPPED HOSTEL」のオーナー、神輝哉(じん・てるや)さんです。雪国の長い冬・長い夜に、薪ストーブを囲む時間は格別。あれやこれやと語りながら自然と話が深まります。今回のポップアップに参加してくださるブランドのみなさんとも顔を突き合わせていろいろと話してきました。そんな様子を切り取り、記事にしてお届けするのが本誌です。 ぜひ、ページをめくってみてください。
道央第二弾はこちらから。
第三弾 CHaT vegan and glutenfree
路地裏にも百貨店にも店を構える、誰も置いていかない洋菓子店
CHaT vegan and glutenfree
宗教や考え方、健康状態にかかわらず、できるだけ多くの人が食べられるように ー。「CHaT vegan and glutenfree」は、 乳製品、卵、小麦、白い砂糖を使用しないお菓子屋です。ベジタリアンやビーガン、ハラル、アレルギーや健康に関する考え方・・・。さまざまな文化や体質、価値観の違いを超え、あらゆる人と「おいしい」を共有できるプランドです。
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きっかけは自分の体質
今回取材チームが伺ったのは、札幌の円山。ゆったり過ごせるカフェやコース料理を出すレストラン、小さなギャラリーなどがある文化度の高いエリアです。そんな円山の路地の奥にひっそりとある「CHaT vegan and glutenfree」の本店。厨房からはケーキをつくる音が聞こえていました。
お話を聞かせてくれたのは代表の柴田愛里沙さん。今回の執筆は、GOOD NEWS代表 宮本吾ーとともにこの新千歳空港のポップアップを担当する私、諏訪晃代が担当します。まずはブランド立ち上げのきっかけを伺いました。
「きっかけはアレルギーやアトピーに悩まされてきたという自分の体質です。小麦も肉も食べられない。添加物にも散感なので、大量生産されているおにぎりもだめ。食べられるものがないんです。一方、度々訪れていた祖父の故郷、ドイツではまったく違う。私のような体質の人でも食べられるものがたくさんあります。日本にだって食の多様性があってほしいと思ったし、それを求める人は少なくない。そういった考えからブランドを始めました」
一般的な洋菓子店にビーガン対応の商品が置いてあるのはたまに見かけますが、 CHaTに来ればさまざまな洋菓子の中から選ぶことができる。これはとてもうれしいことだと思います。
「ドイツでは『どれにしようか』と迷えるほどの選択肢があります。これがどれだけうれしいことか身を持ってわかっているので、札幌三越店のショーケースにはさまざまなケーキを並べています。もちろんおいしさも追求しています。一般的な材料の洋菓子に負けないおいしさを提供しつづけるために、海外のお菓子などのリサーチは欠かせません」
新千歳空港のポップアップでご一緒した MORIHICO. の本店「森彦」も、そういえば近くにありました。森彦もCHaTも本店は、一軒家をリノベーションし、探さないと見つからないような立地で、お店に来ること自体が特別な時間になる、そんな素敵な場所。
「このあたりは路地裏に個人店が点在する落ち着いたエリア。食の選択肢がない人には 『こういうエリアに行きたい店がある』という体験もないと思うんです。逆に百貨店の店舗は、忙しくて終日バタバタなんですが(笑)」
ロマンとそろばん
柴田さんの「路地裏」と「百貨店」というキーワードがさらに気になった宮本はもうひとつ質問を投げかけます。
「路地裏のお店を切り盛りしている人って、あえて規模を小さく抑える個人経営が多い。でも柴田さんは株式会社の『CEO』として活躍しているし、たくさんの来客がある百貨店にもお店を構えていますよね。どうしてなんですか?」
そう問われた柴田さんは、明確な答えを持っていました。
「実は数年前に体調が悪化して、寝たきりになってしまったんです。自分がつくり手だと、こういうときに事業がストップしてしまう。商品の製造は一緒に働いているパティシエや協力工場に任せ、私は得意分野である営業やマーケティング、ブランディングに集中しています」
体質や個性、つまり自分自身と向き合いながら店を続けていくために「家業」というよりも「事業」を選んだ、ということなのだと感じました。
「私たちの商品を待っている人は全国にいるし、どんどん広がっていく可能性も感じています。だから、もっと大きな規模で生産できる体制も整えていきたい。店舗も2 ~3 店舗くらいは増やしたいです。とはいえ、規模拡大は慎重に進めるべきとも思っています。特に大事なのは、スタッフの知識や意識です。商品の材料を把握し、体質に応じて提供しなければ命に関わる。 規模は小さいけれどルールを明確化して、アルバイトスタッフも適切な接客ができるように、 仕組み化していくことを大事にしています」
自分たちの価値を丁寧に広げていこうとしていることを感じた宮本は、バターのいとこを始めたばかりの頃を思い出したようです。
「バターのいとこも同じくらいの大きさの厨房からスタートしたんです。1日100箱作れるのがやっと。そこからいろんな人に応援してもらって、ここまで拡がってきたんです。だから、新千歳空港のポップアップを通して、CHaTさんが気づきやチャンスを見つけてくれたら僕も嬉しいです」
私たちは「ロマンとそろばん」という言葉を大切にしています。自分たちが成し遂げたい夢を持ち希望を語り合うことと、数字を緻密に積み上げビジネスとして持続していくこと。どちらかに偏らず、両方を大切にしたいという想いです。柴田さんからも同じ想いが強く伝わってきました。
「嬉しいです。新千歳空港はいつかチャレンジしたいと思っていたんです。楽しみです!ありがとうございます」
二人の会話は静かで穏やかだったけれど、そこにはとても熱い時間が流れていました。
■展開スケジュール
11/1(金)~11/30(土)
■展開商品
・森からの贈り物~VEGAN AND GLUTENFREE COOKIES~
・北海道のお花のかおり 夢見るこねこのフィナンシェパイ
・チョコチップクッキー
・抹茶ボーロ
・チョコチップと抹茶ボーロのセット
・みんなのクッキーBOX
・夢見るこねこのおやつ袋
取材:宮本吾一 / 諏訪晃代 / 横山えりな
執筆:諏訪晃代
撮影:横山えりな