GOOD NEWS HISTORY(前編)バターのいとこを手がけるGOOD NEWSってどんな会社?
空港や東京駅に店舗を構えるお土産菓子「バターのいとこ」を手がける株式会社GOOD NEWS。
東京から新幹線で約1時間、栃木県の那須町に本社を構えています。豊かな自然に囲まれ、北海道に次ぐ酪農の街でもある那須の本社は、東京ドーム約1個分の広大な土地に工場と店舗、事務所を構えている、森の中に佇むような場所。ここで商品開発・製造・販売まで一貫して行うGOOD NEWSはどんな会社で、どのような道を歩んできたのか。その背景には多くの生産者さんや仲間たちとの出逢いがありました。これまでを振り返りながら、改めてGOOD NEWSという会社についてお話したいと思います。
「バターのいとこ」をはじめGOOD NEWSのお菓子を購入し応援してくださっているお客様や、関わる人たち、働く仲間たち、これからGOOD NEWSで働くことに興味がある方たちに「GOOD NEWSが大切にしてきたこと」を知る・考えるきっかけになれたら嬉しいです。

発売から7年経った今もたくさんのお客様が手に取ってくださっている「バターのいとこ」。各地域の生産者さんとの繋がりから新しい取り組みが生まれ、販売店も全国へ広がっている。
「バターのいとこ」というお菓子
GOOD NEWSという会社はまだあまり知らないけれど、「バターのいとこ」というお菓子は知っている!という方も多いかもしれません。この記事を書いている筆者自身も、最初のきっかけは「バターのいとこ」という珍しいネーミングのお菓子があって、そのお菓子にあるストーリーが面白いのだとお菓子に詳しい友人が教えてくれたのがきっかけでした。

お菓子を買う時、皆さんはどんなことを大事にしますか?
まず欠かせないのは美味しさ。それから見た目の可愛さ。お値段。自分かお土産用か。お土産であれば誰にどんなシーンで渡すか。テレビで話題で試しに買ってみたい!など色々な観点があると思います。
そうした目的にあっていることも手に取っていただく上ではとても大事なことだと思います。
その上で、私たちはお菓子ができるまでのストーリーも一緒に届けたいという想いでお菓子の開発・販売を行っています。
美味しいとともにストーリーも届けることにこだわるのは、GOOD NEWSのお菓子は、生産者さんの夢や課題に触れ、応援したいという理由を基に誕生しているからです。代表するブランド「バターのいとこ」が開発された背景にも、ある酪農家との出逢いと、酪農家の夢・課題がきっかけでした。

ある酪農家の友人との出逢いが、バターのいとこ誕生のきっかけに
バターのいとこが生まれたきっかけとなったのは、GOOD NEWSの創業者である宮本吾一(みやもとごいち)の友人であり、那須で酪農を営む山川との出逢いでした。山川は学生時代の北海道での搾乳体験で、牛が山に放され草を食べている光景に感銘し、自身も現在「森林ノ牧場」という牧場を営んでいます。日本では白黒斑点模様のホルスタイン種が多い中、森林ノ牧場では茶色い毛並みをしたジャージー牛が放牧されており、1頭1頭に可愛い名前が付けられのびのびと育てられています。


山川にはある夢がありました。それは自分たちが育てた牛のミルクで製品を作りたいと言う夢。そのひとつが”地元産のバターをつくること”です。しかしバターづくりには大きな課題がありました。牛乳からできるバターはわずか4%、残りの90%はスキムミルク(無脂肪乳)になります。スキムミルクは脱脂粉乳に加工されることが多いですが、特に小規模な酪農家が加工を担うことは難しく、価値も付きにくいため安価に取引されている現状があります。
山川から相談を受けた宮本は、森林ノ牧場で育ったジャージー牛のスキムミルクを飲んでみたところその美味しさに感動したと言います。スキムミルクもまた大切な食材であり、スキムミルクに相応の価値が付くような商品開発ができたら彼らの応援になるのでは、と考えました。

スキムミルク(無脂肪乳)の利活用による循環イメージ
宮本の友人であり、都内で人気のパティスリー「Equal」を営むパティシエ・後藤にレシピ開発を依頼。柔らかいワッフル生地にクリームを挟む、フランスの伝統菓子ゴーフレットをヒントに、スキムミルクをミルクジャムにして挟んだお菓子「バターのいとこ」が誕生しました。「バターのいとこ」というネーミングは、バターとスキムミルクの関係が”いとこ”みたいだと思ったところから名付けたそう。
この”挟む”というスタイルのお菓子なら、後に色んな食材を挟んで酪農家さん以外の農家さんの応援にも繋げられる可能性も感じたようです。
現に、今やバターのいとこは定番フレーバーから季節・地域限定のフレーバーもあわせると15種類以上に。フレーバー毎にもさまざまな生産者さんが関わっていて、取り組みは全国へ広がっています。

バターのいとこを購入するというアクションが、実は地域の酪農家さんのバターづくり、フレーバーの食材を作る農家さんたちの応援になり、さらにはお菓子を製造している地域の雇用も生み出し、地域が元気になる一役になっています。つくる人も、関わる地域の人も、食べる人もハッピーになる”三方良し”のお菓子がバターのいとこなのです。これからは”美味しい”の先に、こうした背景に共感して購入するという消費活動も一つの選択肢となっていく未来を描きながら、GOOD NEWSは取り組みを続けています。
GOOD NEWSのはじまりは朝市だった
バターのいとこ誕生のきっかけとなった酪農家との出逢い。さらにさかのぼると、宮本と山川の出逢いは那須で開催していた「朝市」でした。宮本は東京で生まれ、国内外で旅をした後、リゾートバイトをきっかけに那須を訪れました。来た当初は特別な理由があったわけではなかったけれど、気づけば那須に移住して25年。農家や酪農家が多い那須で農家さんたち1人ずつに声をかけていって、共感してくれた農家さんが軽トラの荷台に野菜を積んで駐車場に集まってきてくれて、そのまま販売する形で朝市を開催しました。小さな集まりがやがて大きくなり、最終的には5,000人のお客さんが来るような場になりました。


GOOD NEWSの掲げるコンセプト「大きな食卓」も、この朝市から来ています。生産者さんや働く人、子どもから大人まで、あらゆる背景をもった人が食卓を囲むように集まるコミュニティになれたらという想いは、会社になった今も受け継がれています。


7年間定期的に続けてきた朝市は、毎日地元の農家さんの野菜が買えるようにと、1階にMARCHE(直売所)、その食材を使った料理を楽しめるTABLE(ダイニング)を兼ね備えたChus(チャウス)という店舗へと姿を変えました。現在は宿泊もできる拠点になり、地元の方も観光客の方も訪れる場所として続いています。
バターのいとこの製造販売も、ここChusからはじまりました。


GOOD NEWSの原点とも言えるバターのいとこ、そして朝市。
これらの取り組みから見えてきたのは、取り組みを仕組みにすることで、那須だけではなく日本全国が抱える地域課題、例えば人口減少や農家の担い手不足、福祉や地域の雇用など、多様な課題をデザインで解決できると考えました。
こうしてお菓子の開発を事業の主軸に置きながら、”地域の課題をデザインで解決すること”を使命として株式会社GOOD NEWSが設立されることとなりました。
今も成長を続けるGOOD NEWS。次回の記事では、GOOD NEWSの事業について掘り下げてお話します。