黒磯で愛された日本酒酒場「酒と肴 あくび」。次の物語が生まれる場所を、受け継いでくれる料理人を探しています

この記事は、栃木県・黒磯にある居酒屋『酒と肴 あくび』(以下:あくび)の閉店にあたり、引き継ぎ手を探すために書かれた記事です。設備や内装はそのままに、店の場所を受け継いでくれる次の料理人を探しています。
「記憶に残るいい時間を、居酒屋はつくれる」料理人・立石哲也さん
数年前まで、居酒屋「あくび」のある通りの夜は静かでした。いまでは何軒かの店が夜も灯りをともしていて、宿からそれぞれの店へと向かう人々の足元を照らしています。
カフェや雑貨店、古道具店にフラワーショップなど、旅の目的地となる店が並ぶ黒磯の通り。昼には多くの人々が行き交い、賑わいを見せます。

その一角にある「あくび」では、セレクトされた日本酒に熱燗、和食ベースの美味しい料理が提供されています。料理人の立石哲也さん(通称:哲さん)はいつも、食事を終えて店を出る前のお客さんに「お腹いっぱいになりましたか?」と声をかけていて、その人柄の温かさと料理を楽しみに、県外からも多くの人が訪れる店になりました。
そんな「あくび」が、今年3月に閉店します。

閉店の理由は、料理人の哲さんが故郷に戻り、実家の料理店を継ぐため。熊本県天草にある焼き鳥料理の店「鳥蔵」で、両親が22年続けてきた店を継ぐのだといいます。

「本当は次の人を見つけてから出て行きたかったけど、親のことも心配。地元の外に出してくれたことでいろんな経験ができたから、それを持って帰るときが来たんやないかな」と話す哲さん。
黒磯に移住して、店を開いて6年。哲さんにとってもその時間はかけがえないものだったといいます。

「あくびをやらせてもらって、自分の武器が増えたと思う。海の近い故郷の店なら、魚の熟成をこんなにも研究しなかったかもしれないし、農家さんや酒蔵の方々とこんなにも出会わなかったかもしれない。生産者の方々と繋がれたのも、この店だったから」。

黒磯の宿「Chus」の運営する居酒屋としてはじまったこの店。Chusの1階ロビーには、まるで朝市のように県内の生産者さんたちの野菜が毎日運び込まれます。実際に農地を訪れ、話を聞いて食材を仕入れていくスタイルに感銘を受けた哲さんは、生産者さんに会いに行くことを大切にするようになりました。


哲さんは、自分のことをあまり多く語りません。店のカウンターで食事を提供してくれるとき、話してくれるのはいつも「この食材がどんな土地で育てられ、どんな人が生産者としてその土地で働いてきたのか」の話。生産者さんと食材について話すとき、彼は自分の話や料理の話をするよりも饒舌になっていました。

「うちの料理のつくりかたは、お客さんにもいつも伝えてる。真似してくれるのも嬉しいし、もっといえば同じ食材を買って真似してくれたら嬉しいから。最後は、やっぱり生産者さんに会いに行って欲しい。お客さんがそこまでするのは難しいとわかってるけど、そういう気持ちで伝えてる」。
そうした姿勢も、黒磯で店を営業するなかで育まれたものだといいます。「Chusの吾一さん(宮本吾一)と一緒にいろんな土地に行ったから。あの人の視点は面白くて、いろんな土地で勉強させてもらった」

さまざまな食材と出会い、料理に悩み、多くのお客様を迎えてきたこの店。料理人が去ったあとのこの場所を、どんな人に受け継いでもらえたらいいのだろう? 哲さんは、「料理の腕というよりも、心のある人に継いでほしい」と話す。
「実家の料理店でお客さんが帰る時、親父はいつも扉の外まで出て頭を下げてた。いまならそれをすることの大切さがわかるし、俺もできるだけするようにしてる。美味しいものをつくるのは大前提で、お見送りしたお客さんたちがその帰り道に『めっちゃいい時間だったね』って言ってもらえるようにしたい。そういう食の体験ってすごく記憶に残るし、それを居酒屋さんで体現するのは難しいことでもあるけど、そういう場を作れると俺は思ってるから」

「まちの灯りを消さないために」オーナー・宮本吾一さん
黒磯の通りにある宿・Chusが運営母体となってはじまった「あくび」。オーナーである宮本吾一さんもまた、誰よりもあくびを愛しながら、県内外から訪れるたくさんのお客さんをあくびに呼び、ともに哲さんの料理を楽しんできた。

「Chusをやっていて、夜の選択肢を増やしたいと思ったんだよね。宿の前にある通りには当時、まだまだ夜遅くまでお酒が飲めるお店は少なかった。ワインが飲める美味しいお店や、メスカルが飲めるいいバーはあるけど、日本酒が飲めるお店は近くになかった。泊まりに来てくれるお客さんの楽しみを増やす意味でも、店をつくりたいと思った」

料理人の哲さんが故郷に戻ることになり、「あくび」は閉店することになりました。そこで物件を手放すのではなく、同じ場所で店をやってくれる「次の料理人」を探す理由を、吾一さんは「まちにあるあかりを消したくないから」と話します。
「この黒磯のまちに長くいて、いろいろなお店が出来ることで通りが“まち”として楽しくなっていくのを見てきた。通りにいい店があることで、滞在するのが楽しくなるし、人の賑わいが生まれると思ってる。あの角に、これからもいい居酒屋があるということが大事なことだと思うんです」

同時に吾一さんは、「あくびを継ぐ、とは考えてもらわなくていいかもしれない」とも話ます。「同じお店を目指しても、哲っちゃんと同じことはできないと思う。だから、哲っちゃんが大事にしてきたことをちゃんと理解してくれた上で、ここで新しく店をはじめてもらうのでもいいのかもしれない」。

条件面にもこだわりはないと話す。
「終盤のあくびのように、Chusから生まれた会社「GOOD NEWS」が運営母体となって一緒に店を経営していく形でもいい。サポートが出来る部分もあるから、『ローカルに入って、店づくりにチャレンジしたいんだ!』という気概のある人にとってはいい条件だと思う」。
「一方で、もしも『この物件を買い取って、自分で店をやりたい』と考える人がいれば、交渉することもできます。ここにお店があるということが大事なことだから」

「ただ、黒磯のまちへの想いをちゃんと持っていて欲しい。このまちがどういうまちで、なぜここで店の明かりがついていることが大事なのか。それを受け止めて考えた上で、店の場所を受け継げるかどうかを決めてくれたら。それを考えるには、まずは哲っちゃんが料理人としている2月末までの間に、店に食べに来てもらうのがいいんじゃないかな」

取材・執筆:乾隼人
【 問い合わせについて 】
お店の内装はそのままに、居酒屋として営業できるテーブルや食器、キッチンも完備されています。リスクを小さくお店を始めたい人にとっては、この上ない物件であると確信しています。
- 取り扱い設備、食器
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店舗情報:
酒と肴 あくび
〒325-0048
栃木県那須塩原市材木町1−1
SNS:https://www.instagram.com/akubi_chus/