【GOOD NEWS NEIGHBORS -北海道・道東編-#2】釧路で作り、釧路で愛されるお菓子を。『むぎいろ菓子店』の地域に根ざしたオリジナリティ
2日目の朝は浦幌町からスタート。昨夜は士幌町から浦幌町まで移動し、ドット道東のメンバーが経営する『ハハハホステル』に宿泊した。
夜はみんなで食事に出かけ、それぞれの町や事業の話をしながらお酒を飲む。真剣に悩みを相談したり、ふざけた話に腹を抱えて笑ったり、自然と関係性が深まっていくようないい時間だったのを覚えている。宴は遅い時間まで続き、フラフラでベッドに入ったと思ったら、次の瞬間にはもう朝だった。
この日は釧路市内で3軒のお菓子屋さんを回る。最初に訪れたのは、2022年にオープンしたばかりの『むぎいろ菓子店』。札幌でパティシエの経験を積み、Uターンで釧路に戻ってきた太田友紀さん、智子さんご夫婦が経営するお店だ。
同店では、北海道の魅力的な素材からお菓子のイメージに合う材料を厳選し、試作を重ねながらレシピを開発。保存性を高めるための安定剤や、作業効率を上げるための既製品はなるべく使わず、配合や焼き時間を工夫しながら美味しさのために手間を惜しまないお菓子作りをしている。
もともとは釧路の市街地でお店を出そうと考えていたが、なかなか理想の場所が見つからず、中心地から車で40分ほどかかる阿寒町での出店を決めた。人通りの多い市街地ではなく、郊外で店を始めた理由について、おふたりは「やっぱり市内だと、みんなが行きやすい場所にお菓子屋さんが固まってるんですよね。だけど、自分たちは少し離れた場所がよくて。あまりお菓子屋さんがないところでお店をやりたかったんです」と話す。
そうして阿寒町でオープンした『むぎいろ菓子店』さんは瞬く間に人気のお店となり、今では昼過ぎに売り切れてしまうこともあるそうだ。地域の方はもちろん、釧路の市街地からケーキや焼き菓子を買いにくるお客さんも少なくない。
釧路市で暮らすドット道東の名塚ちひろさんも、そんなファンのひとり。「ほぼ全メニューを食べてます。季節ごとに新商品が出るんですけど、それも欠かさず買いに来てますね。お土産にもめっちゃ喜ばれるんですよ」という言葉からも、地域で愛されているお店であることが伝わってくる。
新千歳空港に置いてもらう予定のパウンドケーキを食べた宮本さんは、「これ美味しい。香りもいいですね!」と嬉しそうな表情。その場で商品の組み合わせや箱の種類などの打ち合わせがとんとん拍子で進んでいった。
『むぎいろ菓子店』で使われているいちごは、町内で生産されている『ゆめいちご』という品種だそうだ。お店から5分ほどの場所に農園があるというので、そちらも訪ねてみることにした。
やって来たのは、いちごを専門に生産している『夢の杜ファーム』。こちらでは室温や給水、肥料などをコンピューターで制御する最新鋭システムによる水耕栽培が行われており、年間で8トンのいちごが収穫されている。
今年は猛暑によって各地でいちごの不作が続き値段が高騰していたが、それでも需要が落ちることはなかったという。言われてみると、確かにいちごじゃないと成立しないお菓子というものは少なくない。ショートケーキにいちごがなかったら、それはもう別物だ。身近な存在ではあるけど、いちごというのは替えのきかない果物なんだなと思った。
車でわずか5分の距離に農園とお菓子屋さんがあり、産直のいちごを使ったお菓子が作られている。北海道は良質な農作物の産地として知られているが、それはお菓子を作る人にとっても魅力的な土地であることを改めて実感させられた。
釧路の職人さんが、釧路の素材で、釧路のお菓子を作る。パウンドケーキという同じジャンルだとしても、それは間違いなくこの土地でしか生まれなかったお菓子だ。源流まで辿ると、その商品のオリジナリティが見えてくる。それを体感的に味わえるのが、旅をする面白さなのかもしれない。
▼ドット道東的オススメポイント
釧路市街から車で40分という、決してアクセスがよいとは言えない立地にも関わらず、釧路だけでなくオホーツクからも買いに来る人が絶えない。新商品の出るスピードも速く、いつ行っても新しい商品に出会えるのも魅力のひとつ。実は…どっしりしたクリームやチョコのケーキはあまり得意ではないのだが、ここのケーキはフルーツソースの酸味が効いていたりクリームが軽かったりと食べやすいのも私にとっては嬉しいポイント!