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【GOOD NEWS NEIGHBORS -北海道・道南編-#2】やごし本舗「ドン・デ・マカロニ」(知内町)

GOOD NEWSが各地を旅するなかで出会ったお店や商品を紹介する『GOOD NEWS NEIGHBORS』ポップアップを、新千歳空港にて展開中。

今回訪れたのは北海道の南部に位置する道南エリアです。
この地域で「道南のプレイヤーが繋がり、成長するきっかけ作り」を目的に活動している『道南サミット』のメンバーに案内してもらいながら、お菓子作りをする生産者の方々を訪ねました。
2月末、まだ雪が残る大地に少しずつ春の気配が漂い始めた北海道の旅。
同行した道南在住のライター・阿部光平が、その模様をお届けします。

道南第一弾はこちらから。

ユニークな発想で生まれた 新感覚のドン菓子

七飯町を出発した我々は、次の目的地である知内町を目指す。
牧場に続いては海の町だ。パド・ミュゼ(次回第三弾にて掲載)のことを振り返りながら、宮本さんが車内で次のような話をした。

 「ギリシアにグリーク・ディライト(ギリシアの喜び)ってお菓子があるんだけど、その名が示している通りお菓子って喜びだと思うんだよね。食べた人を笑顔にしてくれるとか、幸せな気分にさせてくれるとか、夢の世界っぽい食べ物だよなって。そういう存在だからこそ表現できることがあると思うんだ。社会的な意味を持っていたとしても、あんまりシリアスになり過ぎないというか。馬との暮らしのなかでメープルシロップが作られていて、それがお菓子になっているなんて、おとぎ話の世界みたいじゃん。それがすごくよかったよね」。そう言われてみると、確かにお菓子には生活に一時の安らぎをもたらしてくれる独自の非日常感がある。そして、その実感は次の現場でさらに強くなった。

 知内町は人口約4000人の町で、津軽海峡で育ったカキと、北海道一の生産量を誇るニラの産地として知られている。そのなかでも道南の秘境と呼ばれる小谷石地区が、今回の目的地。ここはかつて漁業で栄えたものの、50年前に起きた豪雨と土石流の災害により、多くの住民が離れ去ってしまったという歴史を持つ。
そんな場所で生まれ育ち、地元を盛り上げようと奮闘しているのが、『やごし本舗』の村田優さんだ。27歳のときに東京から戻ってきた村田さんは、幼い頃から慣れ親しんできた知内の美しい海を知ってもらうために、未経験から船舶免許を取得し、運輸局への航路申請などを経て、クルージングツアーを企画。自ら船に乗ってガイドをしているほか、観光協会の青年部としても活躍している。そんな村田さんがお菓子作りを始めたのは、どんなきっかけだったのだろうか。

クルーズとお菓子という不思議な組み合わせの事業に興味津々の取材チーム。事務所には著名人のサインも多数あった。

「自分は交通事故で2年くらい入院していたんですよ。6回も手術したんですけど歩けるようにならなくて。退院できても車椅子や松葉杖が必要で、一般の会社には勤められない状況だったので、何をして生きていこうかずっと考えてました。そんなときにドン菓子を作る機械をネットで見つけて、これで何か作ったら面白そうだなと思ったんですよね」

 ドン菓子とは、コメやトウモロコシなどの穀類を釜で熱し、圧力を一気に開放することで膨らませるお菓子のこと。全国的には「ポン菓子」の名で知られているが、北海道では作るときの爆発音さながらにドン菓子と呼ばれている。古くからあるお菓子の製法に新たな可能性を見出した村田さんは、東京から機械を取り寄せて試作を開始。芋や栗、昆布など、他ではあまり使われていない食材の加工を繰り返してきた。

 「最初の頃は昔ながらのドン菓子を作って、保育園の夏祭りや小学校の授業に行っていました。子どもたちの前で作ると喜ばれるんですよ。あとは近所の人に配って回ってましたね。『これからちょっとうるさくなると思いますけど、すいません』って挨拶しながら。いつもは静かな場所で大きな音がなったら、昼寝をしてる人とかがビックリするなと思って。それで実験的にいろんな食材を加工してみたんですけど、マカロニが一番いい感じだったんですよね。ただ、マカロニは水分が少なくて膨らみにくいので、米を混ぜてその水分を利用しています。それに北海道産の砂糖とバターで味付けしたのがドン・デ・マカロニです」

昔の苦労話もなんのその。村田さんは終始ニコやかにドン・デ・マカロニの誕生物語を語ってくれた。

 ドン菓子とマカロニという、まさかの組み合わせによって誕生したドン・デ・マカロニ。お菓子作りの経験がない村田さんに対し、当初は「そんなことやって食っていけるの?」という批判的な声も多かったそうだ。しかし、独特のサクサク食感と優しい甘さが身内を中心に評判となり、今では町内のお土産店や近郊の道の駅でも販売される人気のお菓子となっている。

批判を乗り越えたお菓子が 街の風景になるまで

 加工場にお邪魔して、ドン・デ・マカロニの生産現場を見せてもらうことになった。ちなみに、この加工場の建物も村田さんが自ら建てたというから驚きだ。ご本人もおっしゃっていたが、「とにかくやってみる」という精神に衝き動かされている。

 マカロニと米を回転式の圧力釜に入れて熱すること約10分、釜内の圧力を解放する準備が整った。村田さんがおもむろにヘッドホンをつけ、我々は指示に従って耳を塞いでスタンバイする。圧力釜のバルブに向かってハンマーが振り下ろされた次の瞬間、ドーンという大きな音と共に空気を揺さぶる衝撃が部屋中を駆け抜けた。想像を超える音と衝撃の大きさに、思わず笑ってしまう。窓を開けて衝撃の逃げ場を作っておかないと、建物のドアが外れてしまうこともあるそうだ。実際に作っているところを見ると、この製法でお菓子を作ろうと思った村田さんの発想のユニークさにますます驚かされる。

圧力釜のバルブを叩いた瞬間。激しい音、衝撃と共に白煙が上がった。子どもたちが喜ぶのも納得の大迫力。

 白煙に包まれた加工場で、宮本さんは「淡々とやってるけど、すごく独特なことをしてますよね」と笑った。「僕が知る限り、マカロニをこうやって加工したお菓子ってほとんどないと思ってて。村田さんは菓子作りの経験はないけど、そこをガッツとアイデアで超えていく姿勢が本当にすごいです」という言葉には、驚きと敬意が同居していた。
 「そのときは失うものがなかったんですよ。歩くこともできなかったし、本当にドン底で。だから、別に失敗してもいいやという気持ちでやっていましたね。そうしているうちに足がどんどんよくなって、普通に生活できるようになったんです。作り始めて15年経って、今ではお菓子作りの音がしないと、近所の人に『今日はやらないのか?』と言われるようになりました(笑)」
 村田さんが知内町に戻ってきてから15年。批判も多かった独自のお菓子作りは、今や町の風景になっている。それはまるでおとぎ話のようなストーリーだ。

穀類膨張機と呼ばれる製造機械。現在日本で生産しているのは北九州の1社のみで、修理のたびに九州まで送っている

 今後の展望についてうかがうと、「一応、道南ではヒット商品と呼ばれるようにはなりました。これからはロングセラー商品になれるように頑張りたいです。今の子どもたちが当たり前に食べていて、大人になってからも『これ昔からあるよね』って食べてもらえる商品になるのが夢ですね」という答えが返ってきた。
 村田さんの奮闘は、これから先もおとぎ話のように語られていくのだろう。未来で開発のストーリーを聞いた人たちは、きっと「本当に?」と思うに違いない。従来のお菓子作りにはとらわれないユニークな発想から生まれたドン・デ・マカロニ。お土産にするときには、このエピソードと一緒に持ち帰ってほしい。

圧力を解放することでマカロニに含まれる水分が気化し、膨張する。この手法でしか得られない独自の食感になる。

▼道南サミット的おすすめポイント

知内町の秘境・小谷石エリアで活動するやごし本舗の村田さんは、ゼロから様々な商品やサービスを作り上げるクリエイターです。

たまたま動画で見たドン菓子から着想を得たドン・デ・マカロニは、すべて手作業で丁寧に作られたお菓子。ほどよい甘さとカリッとした食感で、食べたら止まらなくなります。その絶妙な相性を、是非楽しんでください。

■展開スケジュール 
5/21(火)~6/24(月)

■展開商品
ドン・デ・マカロニ
シュガーバター 420円(税込)
さくらチョコレート 480円(税込)
りんごチョコレート 480円(税込)
3種セット 1,380円(税込)

▶次回【道南編-#3】旅のつづきを読む

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